月別アーカイブ: 10月 2013

ティアーズは「泣き」がテーマです!

音声担当の望月雄太郎です。
まるいさんのシナリオにはいつも泣かされます。
ギリギリまで粘るんで、「おのれ、忙しい声優さんを指名しておいて!」と、収録のスケジュール調整も担当する自身としては血の涙をうわ何をするasdfgjk……。
 
失礼しました。収録用の台本を渡され、冷静にシナリオチェックをしていたはずなのに、とあるキャラの見せ場でやはり今回も泣いてしまいました。……私自身オッサン通り越してジーサンになりつつあるのに。
それ以降は、なるべく社内で読み返すのはやめました。
ティアーズに期待している方々、どうぞ安心してプレイして下さい。
思えば、前作では登場人物紹介にもいないキャラ二人(ともにいいオッサン)に泣きましたねえ。恥ずかしくも懐かしい思い出です。
 
今回も、登場人物紹介だけ見ていたら予想も出来ないシーンで泣かされました。
しかも、実力ある声優さんたちに演じていただけたので、攻撃力がさらに増幅されていると思います。
 
前作のユーザーさんには山場が来そうな前触れも判ると思いますので、なるべく一人になって、気持ちよく泣いて下さるようお願いします。
そのシーンのメインの役者さん達(片方は未発表の大物)も、比喩ではなく、台本読みで泣いて下さったとお聞きしました(共に百戦錬磨の方なのに…)。

そういう、チェック段階で泣いてくれた声優さんもスタジオに入ればプロです。
感動はあくまで他所に置き、冷静に役になりきり、演じてくれます。
泣いてしまうのは声優さん本人の感動であって、そのキャラの心情とは違うからです。
また、本当に泣いてしまうと後の別場面での芝居が涙声から戻らないことも技術的に問題となります。
「最初に気持ちがあって(©ガラ○の仮面)」と気持ちを作ることをお願いはしていても、入り込みすぎるのは声優さんも私もマズイとわかっているんです。
(物理的に喉に負担がかかる、大いに泣きわめくシーンなどは、その日の収録の最後に持ってくることが多いですけれど、気持ちの流れという点で途切れるので、それを好まない声優さんも多いです)

入り込みすぎて大泣きという点では、『天使のいない12月』の雪緒さんとか、『WHITE ALBUM2』の各ヒロインなど、もらい泣きしてしまいそうな事もありました。
(雪緒さんはラストシーン演じた後、スタジオから30分出てこなかったなー)

逆に、いまひとつ物語や世界に入り込めなくても、パターンで乗り切る場合もあります。
台詞や役を軽く見て流れで演じる、なんて事はありませんが、どうしても収録にかかる時間やキャラの解釈の幅で、パターンの方が演者と制作側双方がわかりやすいんですよねえ。
でも、「あのキャラみたいな声で」と言い出した途端、今から作り出そうとしているキャラが最初からあのキャラを越えられない気がして、言えないんですよね。
気持ちの説明として別の物語を言い出すことはありますが。

キャラを表現するのは、声じゃ無くて芝居だと思いたい。
ic初期のかずさは、声が低いんじゃなく、周囲から孤立して虚勢を張っているからこそ、怖がられるようなドスが利いて聞こえるのです!
(これを簡単に言うと「もっと低くして」って指示になるんですけど 笑)

しかし、ハミル役の松岡禎丞さんのお芝居には度肝を抜かれました。
気持ちを作るどころか、なりきるも通り過ぎ、役を憑依させるのです……!
マイクの前では、まさしく暴走状態。言葉を現出させる器の松岡さんがとちったり、満足に表現できない台詞があると、彼の中の降りてきたハミルが「松岡、行け、お前は出来る!」なんて盛んに叱咤激励を始めるなんて、信じられます?
しかも、ハミルの心情がわかりにくくて松岡さん本人が解釈できないというか納得しきっていない場面では、リテイクを繰り返したあと感情が乱れてしまい、収録終了となった日もありました。
責任とタルトへの想いの板挟みで思いあまってとんでもない行動に出るというのは、私などは「あーあれね、『若さ故の過ち』ってヤツね」でさらっと解釈してしまったのですが、前日の台本読み返しでもそれほど違和感を感じていなかったはずの松岡さん自身が、収録を進めるうちに想像以上の高いシンクロ率に自身が拒否反応を示したのかな。

通常のキャラは喜怒哀楽を演じ分けられれば十分なんですが、ハミルは、初登場モード、二人きりモード、王様モード、覚醒モードと、4種類もの仮面を被った上での感情です。
しかも台詞の数が膨大。どうしても自分が持っている幅の中にはめ込むのが普通なんですが、演じる、と言う点で素晴らしかったです。
覚醒モードでは別の声優さんにも演じてもらってダブらせる想定をしていたのですが、必要なかったですし。

ちなみに、『WHITE ALBUM2』では水島大宙さんにも入り込んでもらえましたが、自分の演技を冷静に見つめる第三者の目を必ず自身の中に持っていました。
あちらは比較的スケジュールに余裕があったので、『納得するまでやりましょう!』と激励したら、「……」だけの台詞で何度も自分でやり直してました。
手法として色々な方がいるんだなと痛感しました。――二人とも大好きです。

ちなみに、声優さんに感謝を伝える方法として、別の機会にまたお仕事をお願いすることがあります。
ファンの方は気づいていらっしゃると思いますが、前にやっていただいたお仕事が良くて、次回作で新たな役を担当してもらうことがよくあります。
ダントラ2の主役の方はあれがあったし。松岡さんも某作品でちょこっとやってもらってます。
見慣れない名前のキャスティングがあったら、過去作のエンドロールとか見ると、大勢並んだ中にその方の名前があるかも知れません。
……でも、強烈すぎると他のキャラで考えられないという面も…。全然違う芝居ができるのに。